一般に、形のある物を買う場合、その費用(金額)は、わかりやすいです。
実店舗では値札などが普通付いていますし、ECサイトでも商品の近くに価格の表示がされていますので、その物が幾らかはすぐにわかります。
また、物の場合、分割払いにしたり、付属の消耗品を追加で購入するなどの場合以外は、その購入した物に対して追加でお金を払うことはありません。
これに対して、サービスを購入する場合はどうでしょう?
確かに、サービスの場合も、その費用(金額)は普通明記されています。
しかし、サービスの場合は、購入時に一度だけ支払いが発生するとは限らず、継続的にサービスへの対価を支払わなければならなかったり、サービスの段階ごとに支払いが発生するようなことがあり、トータルで幾ら払わなければならないのか、よくわからないことがあります。
我々弁理士の仕事もサービスを提供するものですし、弁理士の仕事内容もあまり知られていないので、弁理士に支払う報酬は、ますますわかりにくいものと思います。
そこで、本稿では、商標登録の費用について、弁理士報酬とその他に発生する費用について、ご説明します。
商標登録の費用の内訳
商標登録をするための費用として、まずは、「特許印紙代」があります。
俗に言う、「印紙代」です。
「特許印紙」となっていますが、商標関係の手続にも特許印紙を使います。
なお、特許庁に対する手続は、書面で行うことができますし、多くの手続は電子データをオンラインによって特許庁に提出することができます。オンラインの場合は、実際には特許印紙は使わず、特許印紙で納付すべき金額を別の手段で支払っていますが、ここでは、便宜的に、その金額も特許印紙代又は印紙代と称します。
次に、商標登録をするための手続を弁理士に依頼する場合は、弁理士に支払う弁理士報酬があります。
また、弁理士報酬には消費税がかかります。
そのため、商標登録の費用としては、印紙代と弁理士報酬と税金(消費税)がかかります。
そして、当然のことながら、印紙代と税金は、どの弁理士に依頼しても同じ金額になります。
そうは言っても、印紙代の額は、ここでお知らせしておいた方がよいと思いますので、印紙代の額については、この後述べていきます。しかし、消費税は、皆様ご存じの通り、弁理士報酬の10%(本記事執筆時)ですので、以下、特に言及致しません。
商標登録の手続ごとの費用の内訳
商標登録の費用が分かりにくいのは、商標登録のための手続が複数回あるためです。
少なくとも、商標登録の手続は、①まず最初に行う「商標登録出願」の手続と、②特許庁の審査に通った後、「商標登録料を特許庁に納める」手続という2回の手続があります。
さらに、特許庁の審査にすんなりと通らない場合は、③「中間」手続という手続が発生することがあります。
さらに、商標登録は、5年単位又は10年単位で行い、それぞれ更新することができますので、もし更新をする場合は、5年ごと又は10年ごとに④「更新」手続が発生します。
上で挙げた以外の手続がまれに発生することもあり得ますが、通常、これら2~4回の手続があり、それぞれに費用がかかります。
次に、各手続の費用をご説明していきますが、具体的な費用のご説明にあたって、お伝えしておかなければならない「区分」について、ご説明をしておきます。
商標登録は、特許庁に商標を登録することですが、あわせて、その商標を使う商品やサービスも登録します。そして、商品・サービスは、45通りの「区分」という単位に分類されています。商品・サービスは、1つだけではなく、複数種類のものを登録することもでき、区分の数も1つか複数個になることがあります。
商標登録の費用のうち印紙代は、この区分の数によって金額が変わりますし、弁理士報酬も区分の数によって金額が変わることがあります。
[商標登録出願」手続の費用
商標登録出願は、商標登録のための最初の手続で、「商標申請」と呼ばれる方もいますが、その費用をご説明します。
・印紙代 ¥3,400+¥8,600×区分の数
商標登録出願の印紙代の金額は、上の計算式で計算されます。
区分が1つの場合は¥12,000、2つの場合は¥20,600、3つの場合は¥29,200等々というようになります。
・弁理士報酬 ¥30,000+¥20,000×区分の数 (弊所の場合)
弁理士報酬の金額は、弁理士によって異なります(以下の弁理士報酬も弁理士によって金額が異なります。)。
上の計算式は、弊所の場合の商標登録出願の弁理士報酬の金額を示しています。
区分の数が1つの場合は¥50,000、2つの場合は¥70,000、3つの場合は¥90,000等々となります。
弁理士報酬の相場を示すデータのようなものは存在しないと思いますが、弊所では中くらいの料金設定を念頭に置いています。
以上から、商標登録出願の手続費用の合計は、区分が1つの場合¥62,000、2つで¥90,600、3つで¥119,200となります。
[商標登録料を特許庁に納める]手続の費用
この費用は、文字通り、特許庁に商標登録料を納める手続に関係する費用ですが、商標登録料を納める段階というのは、商標登録出願をした商標が特許庁の審査に通った段階ですので、弁理士報酬に関しては「成功報酬」という意味合いもあります。そのため、この手続費用のうち弁理士報酬は、「商標登録料納付手数料」、「成功報酬」など、弁理士によって名称が異なります。
・印紙代 ¥28,200×区分の数 (10年登録の場合)
印紙代 ¥16,400×区分の数 (5年登録の場合)
上でも述べましたが、商標登録は10年単位か5年単位で行うことができますので、10年の場合と5年の場合は、それぞれ上の計算式で計算されます。
・弁理士報酬 ¥50,000 (弊所の場合)
この金額は、区分の数にかかわらず固定の金額です。
弊所の弁理士報酬の特徴の1つです。
この段階の弁理士報酬は、固定の金額としています。多くの弁理士は、ここでの弁理士報酬も区分の数が増えるごとに高額となる料金設定が多いです。
そのため、弊所の金額は、比較的に低額に抑えられていると考えています。
[中間]手続の費用
中間手続は、特許庁の審査にすんなりと通らない場合に発生する費用ですが、具体的にご説明します。
特許庁の審査にすんなりと通らない場合は、「拒絶理由通知書」という書類が届きます。これには、審査に通らない理由が書かれていますが、特許庁の最終的な審査結果という訳ではありません。そのため、拒絶理由通知書に書かれている理由に反論をしたり、商標登録出願の内容を修正したりして、再度、特許庁に審査を求めることができます。中間手続は、この反論や修正を行う手続のことを意味します。反論は「意見書」、修正は「手続補正書」という書類をそれぞれ作成して、特許庁に提出します。その案件によって、意見書か手続補正書のどちらか一方で済むこともありますし、両方必要となることもあります。
・印紙代 ¥0 (まれに印紙代が発生することはありますが、基本的には印紙代はかかりません。)
・弁理士報酬 意見書 ¥50,000 (弊所の場合)
手続補正書 ¥10,000 (弊所の場合)
中間手続の弁理士報酬も弊所では、区分の数にかかわらず、固定の金額にしています。
一般的には、中間手続の弁理士報酬も区分が増えるに応じて高額になりますので、弊所の中間手続費用も比較的に安く抑えられていると考えてます。
[更新]手続の費用
商標登録料を5年分納付したか、10年分納付したかで発生するタイミングが異なります。
5年分納付であれば約5年後、10年分納付であれば約10年後に発生します。
それぞれ、5年分の商標登録料、10年分の商標登録料を特許庁に納める手続です。
(ちなみに、商標登録は10年単位で登録することが基本で、必要に応じて、10年ごとに商標登録料を納付して更新します。つまり、5年単位の登録は例外的なもので、5年分納付して、その約5年後に5年分の商標登録料を納める手続は、正確には「更新」ではなく「後半の5年分を納付」することになりますが、この記事では便宜的に5年の場合も「更新」という表現を使っています。)
・印紙代 ¥38,800×区分の数 (10年登録の場合)
印紙代 ¥22,600×区分の数 (5年登録の場合)
・弁理士報酬 ¥10,000 (弊所の場合)
商標登録料を特許庁に納める手続や中間手続の場合と同じように、弊所では区分の数に関係なく一律1万円としていますので、相当、安価な料金設定になっています。
更新手続費用も、区分の数が増えるにつれ高額になることが一般的です。
商標登録費用の注意点
ここまで、商標登録に関係する費用のご説明をしてきましたが、最後に商標登録の費用の注意点をお伝えします。
商標登録料の納付や更新のところでも述べましたが、商標登録は5年単位又は10年単位で行うことを選択できますが、5年単位で登録するか、10年単位で登録するかのご判断は、慎重に行うべきです。
まず、印紙代について言いますと、5年分納付を2回繰り返して10年間商標登録する場合、10年分の商標登録料を一括で納付するよりも割高になる点です。
次に、弁理士報酬については、5年分納付を繰り返す場合、5年ごとに弁理士報酬を支払う必要があります。しかし、10年分一括納付であれば、弁理士報酬は、10年に1度で済みます。
つまり、5年単位での商標登録を繰り返すと、10年単位の場合と比較すると、印紙代が割高になり、弁理士報酬は2倍になります。
5年単位での商標登録の費用は、一見すると安く見えます。
しかし、長く使う商標を5年単位で商標登録してしまうと、かなり損をしてしまいます。
したがって、会社や店舗の名称やロゴマークのように、比較的に長く使う商標は、10年単位で商標登録することが得策で、5年単位の商標登録は、予め商品・サービスのライフサイクルが短いと想定されるケースや事情により初期投資を抑えたいケースなどに限定して利用されることをおススメ致します。


